苔テラリウムをはじめるのに最初に知っておくと良いことまとめ
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苔テラリウムをはじめて見て「かわいい!」「自分も作ってみたい!」と思ったものの、実際はじめようと思ったら何から調べたら良いかわからない。苔はその辺に生えてる身近なものと思っているかもしれませんが、いざ苔テラリウムをはじめようとなると意外とわからないことばかり。
苔テラリウムをはじめる上での疑問点や、最初に知っておくと良いことを一通りまとめました。
容器や苔を揃えるなど、実際に苔テラリウムを作る以前に、手を動かす前にこれだけは知っておくと良いよ!ということを薄く広くまとめます。
- 事前に知れておいてよかった
- これだけ押さえておけば抜け漏れないよ
という感じで、苔テラリウムをはじめるために必要な内容をまとめています。
苔農家・苔作家
こけみざわゆうき
西予苔園
愛媛県西予市野村町という田舎で苔栽培をしている「西予苔園」の苔農家。苔テラリウム向けの苔を10種類程度、庭苔を2種類栽培栽培している。オンラインストアで苔、苔テラリウムの販売、テラリウム容器専門ブランド「Bioloark Japan(バイオロアークジャパン)」の日本販売代理店も行っています。
苔農家であり苔作家。愛媛新聞カルチャースクールにて毎月苔テラリウム講座を開催。YouTubeでは苔テラリウムメイキング動画を配信しています。苔を栽培している知識を活かし苔の生態を生かした苔テラリウムを作っています。
苔テラリウムとは?
そもそも、苔テラリウムとはどういうものを指すのか。まずは苔テラリウムという名前から「テラリウム」について少し紐解いて考えていきす。
テラリウムとは
テラリウムの起源は19世紀に、aquarium(アクアリウム)から派生したと言われています。
テラリウム (英: terrarium) とは陸上の生物(主に植物や小動物)をガラス容器などで飼育・栽培する技術である。 現代でも園芸の一スタイルとして、陸上動物の飼育器として、多くの園館や研究者、アマチュア愛好家によって製作されている。
Wikipedia 「テラリウム」より引用
ラテン語を語源として
- terra=テラ:地球、大地、陸という意味
- ariumu=アリウム:○○に関する、場所という意味
というのが「テラリウム terrarium」の語源。ガラス容器などの中が見える透明な容器の中で植物や動物などを育てることをterrariumと言います。
単純に透明な容器の中にポンポンと植物を入れただけではなく、容器内の水が水蒸気になり、その水蒸気が容器内に循環し、容器の中で絶妙なバランスで小さい地球、つまり生態系がある程度維持されるよう考慮された容器の中で長期的に動植物を育てるというのが、ざっくりとした理解になるでしょう。
そこから苔に派生したのが「苔テラリウム」というわけです。
苔テラリウムとは、透明な容器の中で生態系が考慮され、コケ植物をメインにしたテラリウムとして楽しむこと、それが苔テラリウムという感じですね。
苔テラリウム、苔りうむ、苔リューム?正しい言い方は?
インターネット上やSNS上などで、苔テラリウムの話題を扱う際に若干違う言い方をされているのをしばしば見ますよね。正式には正しい呼び方などがあるのでしょうか?
- 苔テラリウム、コケテラリウム
- 苔リューム
- コケリウム、苔りうむ…etc
「苔テラリウム」が正しい表記で統一されはじめている?
色々な言い方をされてはいるのですが、絶対的な決まりなどはありません。しかし苔テラリウムの書籍を出される際や、インターネット上で統一されつつある表記としては苔テラリウムという表記が一般的な表記として定着されつつあるような流れです。
西予苔園でも、表記を統一する際には、苔テラリウムという表記で統一さるようにしています。
正式な名称は「苔テラリウム」で!
ただ、まぁこれが絶対的な正解では無いので、他の言い方をされている方がいても、苔の精神で寛大な心で苔テラリウムを楽しみましょう。
苔テラリウムで使われる苔って?どんな種類があるの?
まずは、苔テラリウムで使われる苔の王道はこの3種類。
- ヒノキゴケ
- ホソバオキナゴケ
- タマゴケ
1.ヒノキゴケ
ヒノキゴケ。学術名:Pyrrhobryum dozyanum.
ヒノキゴケは日陰の森林の中に生えているコケです。「イタチノシッポ」と呼ばれることもあるようです。動物のシッポのような株がかたまりとなって見事なコロニーを作っている姿を良く見かけます。
乾燥が強くなると株の葉全体が縮れて、さらに乾燥状態が続くと葉先から茶色に変色しやすい。苔テラリウムでは茶色になった部分はカットするなどメンテナンスすると良いです。
苔テラリウムでは最も使われる苔の一つで、育てやすく環境に馴染むと鮮やかな緑色の新芽が出る姿が楽しめます。
2.ホソバオキナゴケ
ホソバオキナゴケ。学術名:Leucobryum juniperioideum.
ホソバオキナゴケの名前の由来は「細葉翁苔」という漢字表記から、おじいさんのひげのような苔という意味があります。短めの葉がもっこりと密集した姿が特徴的。似た苔にアラハシラガゴケという苔もありますが、その違いは顕微鏡で判別しないとわからないほど。ホソバオキナゴケとアラハシラガゴケを一緒に「ヤマゴケ」という扱いで一緒に扱って流通されることもあります。
苔テラリウムでは最も使われる苔の種類と言っても良いかもしれません。草原をイメージするように植え付けられるような使い方で使い勝手も良く育てやすく、苔といえばホソバオキナゴケ!というくらい、苔というとこの苔の姿をイメージする方も多いのではないでしょうか。
明るめの日陰を好みます。苔テラリウムでは照明の明るさが強すぎる場合や、乾燥が続くと葉の色が白味が強くなります。
3.タマゴケ
タマゴケ。学術名:Bartramia pomiformis.
タマゴケは苔好きの中では一番人気の苔とも言われています。画像のように丸い玉のような胞子が特徴の苔。葉は繊細で細かい葉を広げます。乾燥すると縮れます。
冬に元気になる苔で寒くなる時期に新芽を一斉に出し、鮮やかな黄緑色のコロニーになります。夏場の暑さには弱い面があり、苔テラリウムでも夏場は暑さのため茶色に枯れたようになることもありますが、自然のタマゴケも夏場は茶色に変色しても冬場に綺麗に復活するサイクルを繰り返している様子も見られますので、夏場に茶色になっても冬にまた元気な姿を楽しめるようにお世話してあげると良いでしょう。
続いて、苔テラリウムで良く使われる苔5種類も追加で紹介しますね。
そのほか、苔テラリウムで良く使われる苔をいくつかご紹介します。
- コウヤノマンネングサ
- オオカサゴケ / カサゴケ
- コツボゴケ
- チョウチンゴケ
コウヤノマンネングサ
コウヤノマンネングサ。学術名:Climacium japonicum.
コウヤノマンネングサは、苔の中でも最大の苔。見た目はもう苔ではなく草ですよね。これも苔植物なんです。
コウヤノマンネングサは「高野之万年草」というのが和名の漢字表記。その昔、高野山では御札の中に乾燥させたコウヤノマンネングサを魔除けのように使われてきたという由来がある苔で、霊草とも言われています。
コウヤノマンネングサは苔の中では王様のような苔として扱われることも多く、苔好きの方の中でも人気の高い苔です。
苔テラリウムでは涼しくなる時期に良く新芽を出して増えてくれますが、上に上に新芽が伸びる生態があり容器の中で育てると上部につっかえるほど伸びることがあります。その場合はちょうど良い長さになるよう根本をカットするなど長さを調整してあげると良いです。
夏の暑い時期には毛先が乾燥して茶色になりやすいので夏場には霧吹きでしっかり葉先の水分保湿をしてあげましょう。新芽が出た元株は世代交代のため茶色に変色していきますが、それも自然の摂理によるものです。
オオカサゴケ / カサゴケ
オオカサゴケ。学術名:Rhodobryum giganteum.
オオカサゴケは、大型のカサのような葉を広げるかわいい苔で、苔好きの中では苔界の女王様とも言われています。
オオカサゴケと同じ仲間でカサゴケ、カサゴケモノキという種類もあります。オオカサゴケは顕微鏡で葉の縁を観察し対になった鈎歯を確認し判別することができます。
渓谷沿いなど常にしっとりと湿気が得られる沢や腐植土に自生しています。葉が乾燥と紫外線でダメージが出やすく、乾燥するとチリチリに縮れて痛みます。自然界でも乾燥するような場所の自生はあまり見られず、ダメージが出にくい湿気が溜まる場所に広く自生していたりすることがあります。
コウヤノマンネングサと同じように、上に上に伸びる性質がありますので、苔テラリウムで育てる場合は、株の上からさらに新芽が出て上にどんどん伸びていったりするケースや、葉が上手に開かず茎だけ伸びるケースもあります。上手に葉を広げさせるのが難しい場合もあります。
コツボゴケ
コツボゴケ。学術名:Plagiomnium acutum.
コツボゴケは横に這うような匍匐茎(ほふくけい)と、真上に立ち上がるように伸びる直立茎(ちょくりつけい)の2種類の茎を伸ばす苔です。温かい時期には直立茎がどんどん伸びて立ち上がり元気に成長してくれます。
冬場など寒い時期には匍匐茎がしっとりと伸びながら少しずつ育成の範囲を広げます。
コツボゴケは水を好む苔ですが、水に浸からない程度の環境を好みます。苔テラリウムでは石や流木、壁の上に這わせるような使い方をされます。水を含んだ葉の状態はみずみずしく綺麗で、苔テラリウムではわりと簡単に育成できるため縁の下のちから持ち的な存在で人気の苔です。
オオバチョウチンゴケ
オオバチョウチンゴケ。学術名:Plagiomnium vesicatum.
コツボゴケと同じように水を好む苔ですが、葉の大きさはコツボゴケよりも大型。横に這うような匍匐茎(ほふくけい)と、真上に立ち上がるように伸びる直立茎(ちょくりつけい)の2種類の茎を伸ばす苔です。
葉が大きく水を含んだ状態では透明感がありとても綺麗。苔テラリウムでは水場の表現の際に用いられることが多く、その他には石への着生や這うように伸ばすような表現に使われることが多い。乾燥には弱いので常にしっとりと葉が湿っている状態を保つのが良いです。
その他にもオススメの苔や紹介したい苔がたくさんあります。
苔テラリウムで使われる苔以外にも、庭苔用の苔などもあり、時間があれば苔辞典みたいなものを作りたいと思います!お楽しみに!
苔はその辺に生えてる苔を持ち帰っても良いの?
苔テラリウムに興味を持った方から良くご質問頂くことが多いご質問。その辺に生えている苔を持ち帰って苔テラリウムに使っても良いのでしょうか?
ご自身の私有地や権利を所有する持山などから採取することは問題無いかと思いますが、採取した苔をそのまま苔テラリウムに使う場合は、その後のトラブルにならないよう下処理をしなければいけません。
苔の下処理
苔を山から採取してきたそのままの状態では、山の土が付着していたり、小さい微生物や虫の混入、虫の卵の混入などがかなり高い確立で発生します。そのまま苔テラリウムに使用すると土の中に混入している小さな虫などが容器内で苔を食べたり、虫の発生が起こる、カビなどが生えやすいなどのトラブルに繋がりやすいため、しっかり洗浄する、ゴミや虫を除去するなどの下処理する必要があります。
苔テラリウム向きの苔を楽しみましょう
市街地など苔を探す視点で周りを観察すると、いろいろな苔が生えていることが見えてきます。道端の側溝などにこんもり立派な苔があったりすることもあるでしょう。
しかし、それらの苔が苔テラリウムで育てるのに適しているかというと、その辺に生えている苔は苔テラリウムには不向きな苔も多いです。苔テラリウムで楽しめる定番の苔などは以外と種類が限られていたりしますので、苔テラリウムで楽しむ場合には苔テラリウムに向いた苔を使うようにしましょう。
このページ内で紹介したような代表的な苔から始められると良いと思います。
無許可の採取は違法、ぜったいダメ
ご自身で権利を所有しない山や国立公園に指定されているような渓谷や森林などから勝手に苔を採取することは違法行為ですのでだめです。近年苔ブームで山採りする人が増え、貴重な苔植物などが絶滅種に繋がる危険などが問題視されていますので、苔に興味を持ったからといって違法採取などは絶対にしないようにしましょう。
オススメの書籍など
苔テラリウムをはじめようと思ったとき、もう少し苔テラリウムのことを勉強してみようかな?と思ったらこちらの書籍がオススメです。
はじめての苔テラリウム―失敗しない植え方・育て方・メンテナンスがわかる
¥1,320円 園田 純寛 著
鎌倉の苔やさん「苔むすび」代表の園田さんの著書。はじめて苔テラリウムにチャレンジする際に持っておくと、苔テラリウムについての一通りのことはわかります。苔辞典もあるので、苔テラリウムに最適な苔の種類などもわかります。
部屋で楽しむ 小さな苔の森
¥1,540円 石河 英作 著
苔クリエイターで苔テラリウム専門ショップ「道草」運営の石河さんの著書。YouTube登録者数は14万人(2023年1月時点)で苔YouTubeチャンネルではTOPのチャンネル。基本的な苔テラリウムの作り方から石河さんならではの様々な作り方などが学べます。
フォローしておくと良いSNSアカウントまとめ
苔テラリウムを楽しむためにフォローしておくと良いアカウントを、YouTube、Instagram、Twitterと3つのSNSでそれぞれオススメアカウントをピックアップしました。
長くなるので以下のページにまとめています。ぜひチェックしてみてください。
苔テラリウム界隈SNSおすすめアカウントまとめLINEで苔の無料相談
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