苔を楽しむためのマナーと知識

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苔テラリウムを楽しむ上で、苔そのものをどのように楽しむのが良いのでしょう。自然に生えている苔との向き合い方や苔を取り巻く環境を含め、苔を長く楽しむための最低限のマナーと知識を学びましょう。

著者のプロフィール

苔農家・苔作家

こけみざわゆうき

西予苔園

プロフィール

愛媛県西予市野村町という田舎で苔栽培をしている「西予苔園」の苔農家。苔テラリウム向けの苔を10種類程度、庭苔を2種類栽培栽培している。オンラインストアで苔、苔テラリウムの販売、テラリウム容器専門ブランド「Bioloark Japan(バイオロアークジャパン)」の日本販売代理店も行っています。

苔農家であり苔作家。愛媛新聞カルチャースクールにて毎月苔テラリウム講座を開催。YouTubeでは苔テラリウムメイキング動画を配信しています。苔を栽培している知識を活かし苔の生態を生かした苔テラリウムを作っています。

苔との向き合い方とは

そもそも「苔」と聞いて、最初に持った印象はどのようなものでしょうか?多くの人が

  • 苔ってその辺に生えてるものでしょ?
  • 苔は山にいくらでもあるでしょ?

みたいな感じだと思います。

だけども、実は最近苔ブームが盛り上がるにつれ、あることが問題視されはじめました。

苔の違法な山採り問題

日本のレッドデータ検索システムより引用

これは、西予苔園でも栽培しているコウヤノマンネングサの、都道府県別の絶滅種の指定一覧です。日本では8つの都道府県で準絶滅や絶滅危惧2種などに指定されはじめています。その理由は「園芸目的の採取」が主な原因。

近年インターネットの個人売買アプリやサービスなどを通じて、人気の苔などが手軽に販売できることもあり、違法な苔の採取が問題になりつつあります。

都市開発などにより、山が開拓されるなどで環境変化が生じて、希少な苔の自生環境が現象しているために苔の種が絶滅危惧種に指定されるということもありますが、園芸目的により採取される苔も近年増えてきました。

違法な苔採取をしない

そもそもですが、山や自然環境の中の植物の採取は様々な法律により禁止されているのが大前提。国定公園などの貴重な山野草なども採取してはいけません。苔の勝手な採取は違法です。

自然の中の綺麗に自生している苔を見つけたら、その姿を愛でるだけにとどめて採取するようなことはやめましょう。

持山などで土地の権利者の許可があれば採取しても良いものではありますが、山採りすると採取した場所の苔が再生するには何年もかかるのでやはり環境に負荷がかかってしまいます。

古来より苔農家をされている苔農家さんなどは、自然の苔を乱獲して苔の種が絶えないように、環境に負荷のかからない範囲で上手に苔を採取する方法を熟知していて自然の苔を守りながら苔を採取してきた歴史があります。

苔の成長はとてもゆっくり

苔テラリウムを育ててみると良くわかりますが、苔の成長はとても時間がかかります。苔テラリウムという守られた環境の中であっても苔の成長は緩やかです。

自然に生える苔は、その美しい姿に繁茂するまでに、とてつもなく長い時間を要しています。自然環境の中で見事に生えている美しい苔たちは、その姿になるまでに何年も何年も、人間が思う以上に時間をかけてその環境に馴染みゆっくり成長してきています。

苔を山採りするということは、その長い年月の時間をかけた苔を一瞬で奪っていく行為と同じです。

人の手によって無残に剥ぎ取られたシッポゴケの群生

苔の成長を愛でて楽しむということは、苔の成長や苔が自生する環境に対する配慮の心を育てることが大切。山の苔を奪うのではなく、山でひっそりと生きている苔たちに思いを馳せ山の苔はその姿を愛でるにとどめ、苔テラリウムで苔を使いたい場合は安心安全に栽培された栽培された苔を入手して思う存分苔を楽しむことをオススメします。

苔テラリウム向きの苔を知ろう

山じゃなくても、近所の側溝や水路のそばなど、採取してもさすがに誰からもお咎めがないだろうという場所の苔であっても、そのまま苔テラリウムに使うのは適さないことが多いです。

理由としては2つ。

自然採取の苔が苔テラリウムに適さない理由2つ
  • 苔テラリウムには向かない苔の可能性
  • 自然環境の苔は汚れや虫の混入などトラブルの元に

苔テラリウムには向かない苔の可能性が高い

その辺に生えているこんもりかわいい苔。それらの苔は苔テラリウムには適していない可能性が高いです。

市街地や住宅地の近くに生えている苔は、主にギンゴケやホソウリゴケなどかと思いますが、それらの苔は日当たりの良い場所で乾燥にも強い苔の種であることが多いかと思います。

それらの苔を閉ざされた容器の中に入れてしまうと、かえって調子が悪くなってすぐに苔がダメになってしまう、うまく育たたないということがほとんどでトラブルになりやすいです。

汚れや虫の混入などトラブルの元に

自然採取された苔というのは、土や腐葉土、ゴミなどの有機物が付着しています。それらの有機物は苔テラリウムにすると腐ったりカビが生えてくるなど、苔テラリウムとして長期間育成をする際にトラブルに繋がりやすいです。

自然の土や苔の中には、虫の住処になっていたり、虫の卵が混入するなどで植え付け後に虫が出てきた、苔が食べられたなどのトラブルに繋がりやすい要因になります。

これらのトラブルも、栽培された苔であればかなりリスクが低減されます。出荷前にしっかり洗浄され虫の混入なども対策済み。カビの発生などを抑えるための消毒処理などをが行ってある苔農家さん、苔テラリウムショップなどがオススメしている苔テラリウム用の苔を入手して、安心安全な苔テラリウムを楽しみましょう。

より苔をもっと楽しむならオススメの書籍

苔テラリウムのみならず、生活の中で身近に自生している苔や、苔の名勝地のような場所に自生しているものすごい苔などをもっと知りたい、楽しみたいと思ったら参考にしたいオススメの書籍をいくつかご紹介します。

コケ見っけ! 日本全国もふもふコケめぐり

苔を愛するライターの藤井さんの新刊。街中で見かける苔から苔の三大聖地(奥入瀬・北八ヶ岳・屋久島)や、苔庭のお寺など全国の苔の名所を歩いて見つけた魅力ある苔たちを元祖コケ女子の藤井さんが紹介しています。

ずかん こけ

家のまわりの苔や、市街地に生えている苔など生活のシーンごとで紹介されているのがわかりやすくて、子供から大人まで楽しめる苔の図鑑です。

じっくり観察 特徴がわかる コケ図鑑

掲載点数506点の苔が1冊にまとまっている、単行本サイズのコケ図鑑。同じ仲間のコケでも種類が違うコケなどの掲載もありコケの種類の奥深さを実感できる一冊。コケの乱獲を防ぎたいという思いから出版されたという著者の思いのこもった一冊。

さらにディープな苔の世界へ

苔テラリウムを通じて苔の魅力にハマったら、苔をもっと楽しめる団体などに加入してみても良いかも。

西予苔園でも加入している協会などもいくつかご紹介します。

日本蘚苔類学会

日本蘚苔類学会(にほんせんたいるいがっかい)は、苔の学術研究の日本最大の学会。

主には苔の分類学を中心に大学で研究されている研究者の方々が参加され、年に1回学会の発表会が開催されます。

西予苔園も加入させて頂いていますが、専門分野過ぎてちょっと難しい側面もありますが苔をしっかり学ぼうという方は入っておいて損は無いのではと思います。

岡山コケの会

本拠地は岡山ですが、関東、関西、九州、四国など全国に支部があり、それぞれの支部で苔のイベントなどを開催されていたりします。

リアルの苔観察会なども開催されることもあるので、苔をリアルで観察してみたいという方は加入されると楽しいと思います。

こけみざわ
こけみざわ

苔を楽しむためのマナーから苔を楽しむディープな学会までご紹介してみました。

ご紹介した書籍などにも苔を楽しむための心得など著者の思いが述べられてますので、気になった本があれば手にとってもらえると、私の言いたかったことがまたより伝わると思います。

苔テラリウムのはじめかたと楽しみ方

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