苔テラリウムを育てていると
良くあるトラブルとその原因
対処法まとめ
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苔テラリウムを作ったあと、2〜3ヶ月くらいは順調に育っていても、半年〜1年と経過していくとトラブルが発生する確率は高くなります。
長期間苔テラリウムを育てる上で良く発生するトラブルとそれらの要因、対処法を解説していきます。
苔農家・苔作家
こけみざわゆうき
西予苔園
愛媛県西予市野村町という田舎で苔栽培をしている「西予苔園」の苔農家。苔テラリウム向けの苔を10種類程度、庭苔を2種類栽培栽培している。オンラインストアで苔、苔テラリウムの販売、テラリウム容器専門ブランド「Bioloark Japan(バイオロアークジャパン)」の日本販売代理店も行っています。
苔農家であり苔作家。愛媛新聞カルチャースクールにて毎月苔テラリウム講座を開催。YouTubeでは苔テラリウムメイキング動画を配信しています。苔を栽培している知識を活かし苔の生態を生かした苔テラリウムを作っています。
茶色に変色する
苔テラリウムの苔が茶色になるのは、苔テラリウムでも一番多い悩みかと思います。苔が茶色になる要因はいくつか要因が考えられます。要因ごとに対処法も違いますので代表的な5つの要因を解説します。
- 水不足・乾燥
- 明るすぎる
- 蒸れ
- 薬害
- 虫の影響
水不足・乾燥
苔テラリウムで水やりを忘れてしまったり、乾燥度合いの早い環境に設置して容器内の乾燥が進むと、苔が乾燥しダメージが出やすくなります。
乾燥に強いホソバオキナゴケなどのシラガゴケの仲間の苔などもありますが、水を好む苔などの場合は乾燥してしまうとすぐに傷んでしまう苔もあります。
乾燥によるダメージがでると、葉の葉先から茶色に変色していく症状が出てきます。
適度な水やり頻度でしっかり水やりをして育ててあげましょう。基本は週に1回が目安ですが、置き場所や育てる苔の種類に応じて苔の状態を良く観察し適切に水やりをして良い状態を保ちましょう。
ヒノキゴケは葉先から茶色になりやすいため、ヒノキゴケの葉先が茶色になった場合は茶色になった部分をカットしてあげると良いです。トリミングですね。
明るすぎる
苔は普段日陰で育成している種類がほとんどで、明るい場所を好まない種類が多いです。一般的な植物と同じような感覚で明るい場所に置いたり、植物用LEDライトなどで強い光に当ててしまうと調子を悪くすることがあります。
苔によっては光合成を抑制しようとして白っぽい色に変色したり、黄色みが強くなっていき茶色に変色していきます。
苔は日陰で元気に育つよう、弱い光で光合成ができるような特性を持っていますので、苔が好む日陰の明るさで育ててあげるようにしましょう。
蒸れ
容器が通気されていない完全に密閉された容器で長期間換気をしていなかったりすると、中の空気が淀んでしまい蒸れてしまいます。
直射日光で容器内が蒸し風呂状態になり温度が上がることで、苔も蒸れてしまい傷んでしまう場合があります。
適度な換気ができるよう考慮された容器を使い、直射日光を避けて容器内が蒸れないよう気をつけてあげてください。
薬害
苔は肥料や殺菌剤などの薬液などにはとても弱い植物です。苔は水分や栄養を直接細胞に取り入れるような植物ですので、すぐに薬害が出やすいのです。
一般的な植物に与える希釈で苔に肥料を与えると、茶色に葉焼けしてしまい苔にダメージが出ますので注意してください。
苔に肥料は必要ですか?と良く質問を頂くのですが、長期間育成する場合であっても基本的に苔テラリウムには肥料は必要ありません。
肥料をもし与える場合は、長期間育成していて、苔の生育が元気が無いなぁと感じる場合などは半年に1回くらいの頻度で与えます。薄い液肥、500mlに1滴程度の肥料を与えたり、ヒバオイルや植物活力剤などを与えることで苔の育成に活力が戻ってきますので、肥料を与えるといってもその程度。
カビが発生した場合の殺菌剤も、規定の希釈の最大希釈で少しだけ与えるというイメージで与えましょう。
肥料や殺菌剤など薬剤を与える場合は、苔が弱っている真夏の暑い時期は避けておくことも薬害を避ける上で大切なポイントです。
虫の害
苔テラリウムが急に一部分だけ茶色になっているというような場合は虫の害を疑った方が良いかもしれません。
苔の中に潜んでいた虫の卵などが一定期間後に還って幼虫になり、成虫になるという成長段階で苔を食い荒らしたりするなどで、苔テラリウムの苔が茶色に変色する、虫の食害で荒らされて茶色になるというケースがあります。
自然界の苔は虫の住処になっていることもあり、虫の卵が混入していることも珍しくありません。苔テラリウム用に栽培された苔で、苔の専門業者さんが販売されている苔はしっかり洗浄処理されているので虫の混入のリスクは少ないですが、自然のものなので虫の混入を100%防げる訳ではありません。
この記事を書いている西予苔園で販売している苔の中でも、過去に数回、お客様から虫の混入のご連絡を頂いたことがあります。毎回かなり気をつけて処理しているつもりですが、それでも数百件と販売している苔のパックの中から数件の虫の混入はあります。
まずは使用する苔などに土が付着している場合は徹底的に洗浄した後に使用するようにしましょう。
そして、それでも虫が発生してしまったなと思われる場合は、虫が直接見つかればつまみ出せば良いのですが、もし見つからない場合は殺虫剤を使用するしかありません。
その場合はベニカXファインスプレーがオススメです。
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カビの発生
カビは夏場に特に発生しやすいですが、1年中いつでも発生するリスクはあります。苔テラリウムは、容器内は常に湿気が多い状態でカビが好む環境でもあり、カビの胞子は家の中には常に飛散していますので、苔テラリウムのカビ対策は作品を作る前にしっかり考慮しておく必要があります。
要因としては以下の3つが主な要因です。
- 素材の下処理
- 弱った苔から発生
- 古い蒴から発生
素材の下処理が不十分だった場合
苔テラリウムの素材として苔や砂、石など様々な素材を使用しますが、それらの素材に土などが付着していると、それらの有機物からカビが発生する場合が多いです。
苔も山から採取してきた状態で山の土が付着しているまま、洗浄も下処理もしない状態で使用していると、苔テラリウムにして半年~1年と土に含まれる有機物が自然分解される過程でカビが発生してしまいやすいです。
基本的に素材に使用する素材は丁寧に洗浄してから使用するようにしてカビの発生するリスクを極力抑えましょう。
苔はしっかり土を洗い流し、落ち葉やゴミなどもしっかり洗浄して清潔な状態にします。
ベースソイルも苔テラリウムに専用にブレンドされたベースソイルを使用します。ベースソイルは何年も苔テラリウムを長期間育成することができるよう考慮されたものなので、専用のベースソイルを使用することをおすすめします。
石などもしっかり水洗いし、ブラシなどでしっかり汚れを洗い落としましょう。
しっかり洗浄したあと、さらに念には念をという場合は、植物用の消毒剤を使用することも良い対策になります。
植物用の消毒殺菌剤はベンレートがおすすめ。ベンレートは苔テラリウムを作ったあとも季節の変わり目に定期的に霧吹きでふきかけておくとカビ発生の予防にもなります。
また、カビが発生してしまった場合も、カビを取り除いたあとにベンレートをふきかけておくと再発防止になります。
ひとつ持っておくと良いですね。
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弱った苔からカビが発生する
苔は本来抗菌効果を持っていて、生命力がある苔はカビの繁殖を防ぐ力を持っています。
しかし、苔自体が弱ってしまったり、夏の暑い時期になると苔の抗菌効果が弱くなり、カビが発生してしまうことがあります。
夏場は特に苔が弱りやすいので、夏場の時期には定期的にベンレートをかけておくと良いでしょう。殺菌剤のほかに天然由来成分のオイルのヒバオイルを使用するのも効果的です。
ヒバオイルはヒバという木から生成されたオイルですが、オイルの中にヒノキチオールという成分が含まれています。ヒノキの木は木の根元に苔が良く自生するのですが、苔との相性も良く育成の促進剤的な効果も発揮し、さらに抗菌効果もあるのでカビ対策にも有効です。
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そして、発生してしまったカビについては、もう手で取り除くしか対処の方法がありませんので、ピンセットなどでカビを取り除いた後に、ベンレートやヒバオイルで対策しておくと良いです。
古い蒴から発生するケース
苔が出していた蒴が役目を終えると、蒴も弱ってきて衰退していきます。そのまま放置していると衰退した蒴柄(さくへい)からカビが発生するケースがあります。
苔から出る蒴はとてもかわいくてそのまま植え付けるケースもあるかと思いますが、蒴柄が衰退して数ヶ月経過したような場合は、気がついたときに蒴柄を取り除いておくと良いでしょう。
苔が長く伸びすぎるトラブルの原因と対処法
苔テラリウムを育てていくと、新芽が出てくるタイミングが訪れます。元気なかわいい新芽がでてくるととても嬉しいですよね。しかし日を追うごとにどんどん伸びていき、元気過ぎて容器のフタに当たりそうなほど伸びていくケースがあります。
元気なのは良いことなのですが、伸びすぎてしまうとどう対処したら良いかわかりませんよね。伸びすぎる場合の要因とその対処法を解説していきます。
苔が長く伸びすぎる場合の要因は以下の2つが考えられます。
- 容器密閉による徒長
- 光が足りないことによる徒長
- 自然の摂理による成長
容器密閉による徒長の要因と対処法
苔は苔テラリウムの容器内では徒長という現象が発生しやすくなります。徒長とは植物が本来自然な姿から異常に伸びたり間延びしたりする現象をいいます。
苔が徒長すると、本来の状態の何倍にも上に伸びてもともとの姿とは全く違うような状態になることがあります。
苔が徒長する要因はいくつか考えられます。
一つは容器の密閉による徒長です。苔テラリウムの容器が密閉された状態だと、新鮮な空気を求めて苔が上に上に伸びるような状態になります。
もう一つ、密閉されたことにより容器内が過湿状態が長く続き、水分過多により間延びして徒長するというケースもあります。
いずれにせよ、容器が完全に密閉されるような状態や、縦長容器で容器の下の方の空気が入れ替わらず空気循環が無いような状態であれば徒長しやすくなります。
容器の密閉状態を改善するように、フタと容器の間に少し隙間を作るような工夫をしてみると良いでしょう。もしくは毎日5分程度はフタを外して換気してあげるよう対処してみてください。
新鮮な空気を苔が感じてくれれば徒長状態も緩和していくようになります。
光が足りないことによる徒長
苔は日陰で元気に育つ植物ですが極端に暗いと徒長してしまいます。例えば自然の中の苔を想像してみると良いのですが、落ち葉などに埋もれて成長に必要な光量を得られない苔は、少しでも光量を得ようと上に上に伸びようとします。
この現象が光量不足による徒長の現象です。
光量不足で徒長する場合は、明らかにひょろひょろとした弱々しい状態で上に間延びしていますので、その弱々しい様子でわかるのではと思います。
これは単純にその場所よりももう少し明るい場所に移動させる、LEDライトなどで光量を足してあげることで対処してあげれば良いでしょう。
自然の摂理によるもの
コウヤノマンネングサやオオカサゴケなど、直立する苔は容器の上に当たるくらいに伸びることがあります。先にご説明した徒長のような状態ではなく、もともとそうなるように成長するような苔があるので、そのメカニズムを説明します。
コウヤノマンネングサ、オオカサゴケはもともと落葉樹の下に自生していることが多い苔です。秋になると落葉樹の落ち葉が落ち体積して、苔が落ち葉の下に埋もれます。
もともと直立していた苔は落ち葉によって倒れ込みます。そして春になって暖かくなると倒れ込んだ株から直立するように芽が出て、新しい株がまた直立します。
このように落ち葉よりも上に上に伸びようとして株を上に伸ばそうとして世代を交代しながら自生するのがコウヤノマンネングサやオオカサゴケなどの苔の特徴です。
苔テラリウムでは落ち葉のような堆積物の影響が無いにも関わらず、新芽が伸びようとするために苔テラリウムに植えた株よりもさらに上に伸びようとします。
これが、容器の高さによっては上につっかえるほどの高さにまで成長してしまう要因になります。
悪い要因での現象ではなく自然なことなので、本来とくに何も対策する必要は無いのですが、容器の上にあたって行き場をなくしてしまうと見た目も悪く、鑑賞する気持ち的にも微妙な気分になってしまうので、そのような伸びまくった株も適切に対策して、観賞価値を維持させておくと良いですよね。
ある程度株が上部に伸びてしまった場合、容器の上部に当たるくらいに伸びてしまった場合は、その株の根本の方からカットしてあげて植え替えてあげるようにしましょう。
カットしても、そこからまた株を成長させてくれますので問題ありません。
そのように切り戻してあげて、適切な長さに戻してあげてきれいな姿で鑑賞できるようにトリミングしてあげると良いです。
以上が苔テラリウムを育てていて出てくる良くあるトラブルと対処法でした。トラブルなども上手に対処してあげて長く苔テラリウム作品を維持できるようになると、何年も何年もまさに苔のむすまで、その作品の景色を楽しむことができます。
茶色になったり、カビが生えたり、長く伸びすぎたりするのは、ほんとに良くありますので対処できるようになっておくと苔テラリウムの楽しみがさらに広がります。ぜひ参考にして対処できるようになりましょうね!
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