苔テラリウムの上手な育て方と
メンテナンス方法まとめ

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苔テラリウムを作った後は、上手にメンテナンスしていきましょう。上手にメンテナンスできれば容器の中で長い時間をかけてゆっくり苔むしていくその姿を何年も愛でて楽しむことができます。

毎日の生活の中で苔がある小さな景色を眺められるのが苔テラリウムの最大の魅力。苔テラリウムの上手な育て方とメンテナンス方法を解説していきます。

著者のプロフィール

苔農家・苔作家

こけみざわゆうき

西予苔園

プロフィール

愛媛県西予市野村町という田舎で苔栽培をしている「西予苔園」の苔農家。苔テラリウム向けの苔を10種類程度、庭苔を2種類栽培栽培している。オンラインストアで苔、苔テラリウムの販売、テラリウム容器専門ブランド「Bioloark Japan(バイオロアークジャパン)」の日本販売代理店も行っています。

苔農家であり苔作家。愛媛新聞カルチャースクールにて毎月苔テラリウム講座を開催。YouTubeでは苔テラリウムメイキング動画を配信しています。苔を栽培している知識を活かし苔の生態を生かした苔テラリウムを作っています。

基本的なメンテナンスの考え方

苔テラリウムは容器の中で育てるため、容器の中の環境はある程度維持されています。本来ならメンテナンスもそんなに手間がかからず、週1回〜2週間に1回程度のみずやりと適度な換気をするだけで良いのですが『うまく育てられない』『トラブルになる』というケースも良く相談を受けます。

苔テラリウムってどのくらいの期間鑑賞できるものなの?

苔テラリウムはそもそも作った後に何年くらい鑑賞できるものなのでしょうか?一般的な植物であれば上手に育てれば何年も何年も鑑賞できますよね。苔はどうなのでしょうか?

苔テラリウムも一般的な植物と同じように上手にメンテナンスできれば10年でも鑑賞し続けられる植物です。苔はとても生命力が強く、枯れたように見えてもまた復活するような強い生命力を持っています。

制作から2年経過した苔テラリウム作品。作品制作時の素材の状態や、メンテナンス方法によって苔の育成状況は変わりますが、ゆっくり時間をかけて苔むしていく苔テラリウムの一例。

すぐダメになる場合も

本来は何年でも長く鑑賞ができる苔テラリウムですが、メンテナンス方法や容器の環境維持の能力の違いによっては、作って1ヶ月もたたない間に苔が傷んできてダメになってしまうこともあり、良くご相談を頂くこともあります。

今回のページの内容を把握していただければ、そんなトラブルも少なくメンテナンスできるようになると思います。

まずは置き場所から

苔テラリウムを作ったら、どこに設置するのかが、苔テラリウム内の環境が苔の育成に適した環境になるのか、それともすぐにダメになるのかの決め手となります。

直射日光や陽の光の近い場所はNG

設置場所で一番置いてはいけない、避けるべき場所が直射日光が当たる場所です。

苔テラリウムはガラス容器になっていますので、直射日光が入ると容器内の温度がすぐに高くなり、サウナのような状態になります。そうすると中の苔やその他の植物は茹でられた状態になり、熱によってすぐにダメになります。

『植物だから明るい陽の光が良いだろう』と思われる方もいらっしゃるようですが、苔は本来日陰の場所で生息している種類がほとんどです。明るすぎる場所は苔の育成にとっても良くありません。

窓際のカーテン越しの明るい場所なら良いかな?と思われる方もいらっしゃるようですが、間接的に陽の光が当たるような場所も避けましょう。

陽の光の熱が感じられる場所は置かないようにしてください。

苔テラリウムの最適な明るさについて

苔テラリウム作品を作られたあと、設置場所と同じく良くご質問頂くのが最適な明るさについて。

リビングに置きたい、キッチンに置きたい、机の上に置きたいなど、置きたい場所が決まっているけど、置きたい場所が最適な明るさなのか判断ができないですよね。

置き場所の光源についても、間接的な自然光なのか、蛍光灯の明かりなのか光源も様々なので余計にわからなくなります。

最適な明るさで一番良くお答えする基準は、

最適な明るさ

1000Lux〜1500Lux

となります。が、明るさを示すLuxという単位自体が馴染みが無いので、余計に混乱します。このような光量計があれば良いのですが、

Luxを計測できる光量計があると解決なのですが、わざわざ購入して調べるにはちょっと…。

なのですが、光源は蛍光灯でも自然光でも、植物育成用のLEDでも良いので、人が普通に生活する明るさであればまずは問題なく育成できると思いますので、置きたい場所が常に暗い場所だったりしない限りは問題ないかと思います。

2〜3ヶ月置きたい場所に設置して育成してみて、苔が調子良さそうなのか調子が悪そうなのかを良く観察してみましょう。

設置場所が暗い場合

明るさが足らない場合は、新芽が出てもひょろひょろとした弱々しい株になる場合がありますので、弱々しく見える場合はもう少し明るい場所へ移動するなど工夫してみてください。

設置場所が明るすぎる場合

逆に明るすぎる場合は、苔の色が全体的に黄色から茶色に変色したり、苔によっては白味が強くなってきたりします。

これは、明るすぎるために苔自身が光合成を抑制しようとして葉の葉緑体を減らしているために起こります。このような場合は少し暗めの場所に移動させてみましょう。

置き場所と明るさについては、もう少し深堀りして解説した内容がありますので、こちらのページを参考にしてくださいね。

置きたい場所が寝室などいつもは暗い場所だった場合などは、思い切ってLED照明を導入されてみても良いのではと思います。LED照明や照度計などのあると便利な苔テラリウムグッズも解説していますので、よろしければこちらの記事も参考にしてみてください。

水やりの頻度は?

苔テラリウムの水やりはどの程度あげるのが良いのか。基本的には以下の目安をベースに考えておきます。

  • 霧吹き→1週間に1回
  • 水差し→月に1回ベースソイルにしっかり水やり

霧吹き:1週間に1回

苔は一般的な植物と違い、根から水分や養分を吸収するのではなく、葉や茎など株全体で水分を補給します。容器内の湿度が高く保たれていれば苔も快適に育成してくれるという訳です。

そのために苔テラリウム内の苔に、直接霧吹きで水を与えます。容器内の湿度を高く保ちつつ、苔に直接水分を与えてあげて水分補給します。

基本的な頻度の目安は週1回。ですが、容器や設置するお部屋の状況に合わせてその回数は調整する必要があります。週に1回の頻度はあくまで目安として考えて、設置する場所や容器の形状によって苔の状態をよく観察し、必要であれば回数を増やすというのが基本的な考えになります。

苔テラリウムの容器の形状によって容器内の湿度の保持具合に違いがあります。また、お部屋が24時間換気のように常に空気の対流があるような場合であれば、水やり頻度は週2回〜3回に増やす必要があります。

苔の状態や、葉の状態、苔全体の様子など苔の表情を良く観察して適切な水やり頻度を見極められるようになるのが一番良いです。

水差し:月1回ベースソイルにしっかり水やり

霧吹きで水を与えていても、長期間育成していくとベースソイル全体が乾燥してくることがあります。

ベースソイルが乾燥してしまうと、容器内の湿度が保たれず容器内が乾燥気味になってしまいます。そうなると霧吹きで水を与えてもすぐに苔が乾燥しダメージが出てしまうので、ベースソイルも定期的にしっかり水を含ませてあげると、容器内の環境が安定します。

その目安として、月に1回は水差しでベースソイル全体を水を挿して水を含ませるようにしましょう。このメンテナンスをやっていない方が多いのですが、もし苔テラリウムの育成がうまくいかないと悩まれている方は、この方法を試してみてください。今まで以上に苔テラリウムのメンテナンスが楽になるかもです。

水差しで水を差しながら、ベースソイル部分に水が浸透している状態を良く確認して水を差しておきましょう。

定期的に換気をしよう

苔テラリウムの苔の育成には新鮮な空気を与えてあげる必要があります。

フタを外して定期的に換気してあげましょう。

苔テラリウム用に考慮された容器であれば、少し隙間があったり容器に空気循環のための空気穴があるタイプなどもあり、自然に空気循環が生まれるようになっています。

そのような容器であっても、容器の形状によっては定期的に換気をしてあげることで、苔が目に見えて元気になることがあります。

フタなどが完全に密閉されているような容器の場合は、定期的な換気は必須です。

換気は、以下の頻度を目安に行ってみてください。

換気の目安
  • 苔テラリウム用の容器→週に1回程度5分程度
  • 完全密閉容器→3日に1回5分程度

容器のタイプによって、上記の目安で換気を行うことで、苔に活気が戻ってイキイキとした状態になってくれます。

夏の場合は、換気を兼ねて夜の夜風に当たるような場所に置いてあげてクールダウンしてあげると、さらに調子が良くなりますよ。ぜひ試してみてください。

夏場と冬場のメンテナンスについて

春と秋は割と育成しやすい時期ですが、夏と冬では少し工夫が必要です。夏場と冬場での管理方法について気をつけることなどを解説します。

夏場の過ごし方

夏場は日中の気温が30℃を超える日が毎日続くようなら対策が必要です。特に室内は気温が高くなりがちですので、部屋の気温を把握できるようにしておきましょう。

毎日30℃を超えるようになってきたら、以下のようなことを注意しましょう。

霧吹き回数を増やす

夏場の暑さで容器内の水分の蒸散スピードが早くなります。霧吹き回数を増やして水分補給の回数を増やします。霧吹きの効果で苔にとってもクールダウンになりますので、夜間に霧吹きしておくと良いでしょう。

夜風に当てる

換気のところでも解説しましたが、夏場は夜風に当ててあげると調子が良くなります。昼間の気温上昇でほてった容器を夜風に当ててクールダウンしてあげると苔の調子がかなり良いです。霧が出ているような夜は霧に当たるようにしてあげるとベストです。

夏場換気する場合は夜間に行い、換気前に霧吹きで水分補給してあげると乾燥からも守れるので、夜風に当てる前には霧吹きもセットで行ってください。

高温の日が続くようなら冷蔵庫に退避

30℃を超えるような日でも苔自体は特に問題になることはありませんが、35℃以上の猛暑日が長く続くような場合は、冷蔵庫に苔テラリウムを退避させてあげるのも良いです。昼間冷蔵庫に退避させておき、夜に取り出してあげて照明の光に当ててあげましょう。昼間は仕事などで外出し部屋が高温になり続けるという場合は冷蔵庫に退避させてあげてください。

冬場の過ごし方

冬の寒さは苔にとっても問題になることは無いです。苔はもともと寒さに強いので冬の寒さは得意。冬は特別加温などする必要はなくそのまま育成してあげてください。

苔の表情に合わせて適切なメンテナンスを

以上が苔テラリウムの育て方とメンテナンス方法の基本的なスタンスですが、苔テラリウムを上手に長期間育成させるために必要なのは苔の表情に合わせて適切なメンテンスをしてあげることです。

そのためには、基本的なメンテナンス方法を通じて、苔の機嫌をお伺いしながらメンテナンス方法を微調整できるようになるのが最終ゴール。そこまでいけば苔テラリウム上級者といっても良いでしょう!

そうなるために、毎日美しい苔を愛でてあげて苔の成長を見守ってあげてください。美しい苔の姿はそれだけで癒やされます。長期間上手に育成できればそれだけ癒やされる時間も長くなります。

そして、気づいたら苔の表情が把握できるようになっているかもなので、毎日愛でてあげることを忘れないでくださいね。

枯らしてもめげない

最後に大切なこと。万が一苔がうまく育たなかったとしてもめげないこと。

ダメになったとしてもその経験が次に生かされます。苔は茶色になってもまた復活してくれる強い生命力を持った植物です。少し茶色になったとしてもそのまま育成を見守っていくと、次の季節には復活することもあります。

夏の暑さで茶色になったタマゴケから、冬の2月頃、新芽が出る様子。
こけみざわ
こけみざわ

私もいままでたくさん苔を枯らしてダメにしてきました。苔テラリウムでも苔栽培でも失敗した数だけ勉強となっています。そうやって上手な育て方を覚えていくものです。

苔が茶色になった場合の復活方法などは以下の記事を参考にしてみてください。

苔テラリウムのはじめかたと楽しみ方

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